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特定適用事業所とは?任意特定適用所との違いや適用基準を解説

2023年04月10日

「特定適用事業所に該当する基準がいまいちわからない」
「任意特定適用事業所との違いがわからず混乱している」

社会保険の適用に関して、似ている単語や細かい条件が多々あり混乱している方もいらっしゃるでしょう。

特に2022年10月の改正で「自分の事業所は対象となるのか」と判断しかねている経営者も多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では特定適用事業所・任意特定適用事業所の概要や申請方法などを解説していきます。
ご自身の企業が該当するか確認するための判断基準として活用してもらえると幸いです。

特定適用事業所とは?任意特定適用所との違いや適用基準を解説

『特定適用事業所』とは短時間労働者に対する健康保険加入拡大のための区分

特定適用事業所とは、短時間労働者の社会保険加入拡大を目的として定められた事業所を指します。
「強制適用事業所」と「任意特定事業所」の2つに分類され、違いは表のとおりです。

強制適用事業所 任意特定事業所
法人として運営している
個人事業であり、従業員が5人以上
個人事業であり、従業員が4人以下
個人事業(法定16業種以外※)

強制適用事業所の場合、必ず自社の社員を被保険者にしなければなりません。
任意特定適用事業所であれば、諸条件を満たすことで社員を被保険者にできます。

参照:『全国健康保険協会 適用事業所とは?』

強制適用事業所との違い

強制適用事業所とは、適用事業所の区分であり、強制的に社会保険が適用される事業所を指します。

法人であれば必ず該当し、従業員数が1人でもいれば適用となっています。
また、法人でなくても以下の業種を営んでいる場合は、適用の対象です。

・製造業
・鉱業
・電気ガス業
・運送業
・貨物積卸し業
・物品販売業
・金融保険業
・保管賃貸業
・媒体斡旋業
・集金案内広告業
・清掃業
・土木建築業
・教育研究調査業
・医療事業
・通信報道業
・社会福祉事業

上記の業種は「法定16業種」とよばれています。

参照:『全国健康保険協会 適用事業所とは?』

任意特定適用事業所との違い

任意特定適用事業所とは、任意で社会保険の適用を受けられる事業所です。
適用となるためには、必要書類を用意し、厚生労働省の認可を受けなければなりません。
営んでいる業種が法定16業種以外の個人事業の場合、対象となります。

認可を受けるためには、過半数の従業員から同意をもらわなければなりません。
詳しい条件や手続きの方法は『任意特定適用事業所となるための手続き方法』にて解説しています。

社会保険の適用は、従業員の負担軽減や社会保険料の経費計上といったメリットがあります。一方でデメリットもあり、労使折半による負担が増える点です。

参照:『全国健康保険協会 適用事業所とは?』

そもそも社会保険への加入基準とは

短時間労働者が社会保険の適用となる一般的な加入基準を理解していなければ、適用事業所の理解は深まりません。
そこで、2016年10月に施工された基準を以下の表にまとめました。

2016年10月〜2022年9月末までの条件
事業所の規模 501人以上
労働時間 1週間に20時間以上
賃金 88,000円以上
雇用期間 1年以上の見込み
適用外 学生(夜間科や休学者は適用)

表でいう事業所の規模501人以上とは、従業員の人数ではなく「社会保険に加入している従業員の人数」です。

つまり、従業員規模が1,000人であっても、社会保険に加入している従業員が400人であれば、基準の範囲外とみなされます。

2022年10月には基準を緩和するための改正が行われ、内容が一部変更になっています。

2022年10月の改正で100人以上へと基準が緩和

2022年10月、さらなる短時間労働者の社会保険加入拡大に向けて、以下の変更がなされました。

2022年10月〜の変更点
事業所の規模 101人以上
労働時間 変更なし
賃金 変更なし
雇用期間 2カ月以上の見込み
適用外 変更なし

事業所の規模が501人から101人以下となり、雇用期間の見込みも1年以上から2カ月に変更されています。
基準の緩和により、今まで該当していなかった多くの企業が適用対象となりました。

2024年10月の改正でさらに範囲が拡大する予定

2024年10月にはさらに緩和される予定となっています。
変更点は以下のとおりです。

2024年10月〜の変更点
事業所の規模 51人以上
労働時間 変更なし
賃金 変更なし
雇用期間 変更なし
適用外 変更なし

該当する事業所は、2024年10月以降に届出書を提出しなければなりません。

特定適用事業所とされた場合は該当届を提出

特定適用事業所に該当した場合は、日本年金機構より「特定適用事業所に該当する可能性がある旨のお知らせ」が発行されます。

案内を受け取った事業所は、届出書を提出するとともに、新たに被保険者資格を得た時短労働者の資格取得届を提出しなければなりません。

任意特定適用事業所となるための手続き方法

任意特定適用事業所となるためには、申出書の提出だけでなく労働者の同意が必要です。
認められた際には、以下の条件に当てはまるアルバイト・パートスタッフがいた場合、必ず社会保険に加入してもらわなければなりません。

・1年以上の雇用が見込まれている
・勤務時間が20時間以上である
・賃金が88,000円以上である
・学生ではない(夜間科・休学中の方は除外)

任意特定適用事業所となるための手続き方法は、以下のとおりです。

1.過半数の労働者から同意を得る
2.申出書を提出する
3.取得届または区分変更届を提出する

それぞれの手順について解説していきます。

①過半数の労働者から同意を得る

任意特定適用事業所となるためには、過半数の労働者から同意を得る必要があります。
同意を得たと証明するための方法は、以下の3つです。

同意した過半数の労働者から代表者を立て、代表として同意してもらう
従業員一人ひとりに同意書をもらう
10人ずつの連名で同意書にサインしてもらう

どの方法にせよ、従業員からの同意が必要です。
書式は日本年金機構の公式HPから取得できます。

②申出書を提出する

同意を得られたら、同意書とともに「健康保険・厚生年金保険 任意特定適用事業所申出書」を提出します。

届出先は、事務センターまたは地域の年金事務所です。
郵送・窓口持参どちらでも問題はありません。

③取得届または区分変更届を提出する

任意特定事業所への認定にともない、被保険者となる従業員が増加した場合は「取得届」が必要です。

被保険者として該当する期間は、任意特定事業所の申出書が受付された日以降となっています。

また、一般労働者から短時間労働者へと変更する場合は「区分変更届」が必要です。

まとめ

特定適用事業所とは、短時間労働者の社会保険加入拡大を目的として定義付けられた事業所区分の一つです。2016年10月から開始され、徐々に基準が緩和されています。
2024年10月にはさらなる変更が決定されています。

もしも、該当の事業者となる場合、社会保険の計算などを改めてし直さなければなりません。社会保険の計算は複雑で大変です。今後の改定で大幅に被保険者が変動するのであれば、社労士の力を借りるのも選択肢として考慮してはいかがでしょうか。